最後の敵を打ち抜いてバーチャル画面に浮かんだ“All Cleared”の文字にうささんが構えていたレーザー銃を下ろす。
「オッケー、さすがうささん、誤射なし〜。」
「やっぱり前のシュミレーターよりこっちのほうが実戦に近いな〜。」
隊内でもトップレベルの動体視力を持ったうささんからそんな感想がこぼれる。
本日行っているのは、ロスDGが開発した新しい射撃シュミレーターをJDG仕様にカスタムした物の試行とデータ取りだ。
「個人のは、これぐらいで充分。コンビネーション組んだ時のデータも欲しいなあ。」
「高レベルのデータがちょっと少ないから、うささんと誰か……」
手元のデータを覗き込んでプログラム担当のアレクさんとロウさんが話していると、射撃室から出てきたうささんも一緒にデータを覗き込み話しに加わる。
「ん〜、俺と組んで大丈夫なのは……アレクぐらい?」
「うささん、ボスは反則技使うから参考データに取れないよ。」
「だよねぇ。」
「どうせなら班外の目で画像処理の出来を見てもらいたい。」
ロウさんの身も蓋もない意見に言われた本人が苦笑いしていると、画像担当のパレさんがこっちもとばかりに言う。
「でも、うささんレベルとなると、班長、副班クラスか。忙しいだろ……ボス、有りりんは?」
「有りりんかあ……」
冠さんが意外にもスナイパーな花係の名前を挙げたが、隊長に匹敵するほど多忙な彼を呼んでくるのは少々気が引けるらしく、さすがのアレクさんも躊躇している。
うささんについていけるレベルの腕前で、時間の融通がきいて、付き合ってくれそうな人。
一人該当しそうな人を思い出す。
室班にいた頃には、終業後の射撃練習場でたまに見かけたし、レベル上位者に名前が載っているのを見た隊長と岩瀬さんが「まずいだろ、これ。」といって苦笑いしていたのも知っている。
去年の模擬演習の時は警護対象だったはずなのに「護身用」に持っていた銃を構え、テロ(役のロスメンバー)に容赦なくぶっ放していた。と警護にあたっていたメンバーが尊敬の眼差しで話していたし。
誰もまだ気がついていないようなので、ほやっとその人の呼び名を呟く。
「……Dr…?」
「「「あ!」」」
一斉に顔を上げたメンバーの嬉しそうな視線が集まる。
「Drか、盲点だったな。」
「さすがうえぽん!Drなら射撃得意だ。」
えらいえらい、と冠さんが俺の首をホールドして頭をくしゃくしゃと撫でる。
「検診の結果も出たあとだし、急患さえなければ時間空いてるかもな。」
月1だった検診が年3回になったから、以前よりも時間の余裕がある。まだ風邪の流行する時期でもないし、ロウさんのいうとうり急患がなければきっと通常業務のはずだ。
「じゃあ、俺、Drの都合聞いてくるよ。」
「うささん、よろしく〜」
「この時間だと多分、センター辺りで巡回してると思う……」
昔とった杵柄で室班時代にDrとよく遭遇した場所を言うと、うささんが「よくできました」というようにすれ違いざまにぽんと肩をたたいて跳ねるように出て行った。
Fin
2007/09/26 初稿
あやしものチーム”2射撃シュミレーション”より。
あの冠にぐりぐりされてるうえぽんでこれだけ萌えられます(笑)